加齢に伴って網膜の裏側に老廃物が堆積することで、網膜の中でもものを見る機能を有する「黄斑部」やその周囲の網膜に障害をきたす病気を「加齢黄斑変性」といいます。わが国では50歳以上の約80人に1人(1%程度)にみられ、近年高齢化に伴い増加傾向であり失明原因の上位の疾患となっています。病気の原因は加齢以外の素因に不明な点が多く完全な予防策もありませんが、特に「タバコ(喫煙)」は加齢黄斑変性と関連すると考えられておりわが国でも高齢者男性の喫煙率が高いことから発症率が男性で高いことが明らかになっています。
加齢黄斑変性は大きく「萎縮型」と「滲出型」との2種類に分けられます。
萎縮型は、ゆっくりと網膜が障害されて栄養が行き届かずに痩せていき徐々に視力低下していく病態で、有効な治療法は確立されていません。
滲出型は、網膜の裏側に異常な血管(新生血管)が生えることで、血管の壁がもろい新生血管からの血液内の成分がにじむことでむくみ(浮腫)を生じる場合や血管自体が破れて出血をきたして視力低下する病態です。網膜がむくむ(浮腫)ことによる「ものの歪み」や出血による「見たい部分が暗くて見えない(視野障害)」などの症状も併せて出てきます。治療にはレーザー治療や手術、サプリメントの内服などがありますが、いずれも絶対的な効果はありません。現在最も行われている治療法は、硝子体注射がメインとなっています。硝子体注射は有効な治療法ではありますが、再発例も多く継続的かつ繰り返し治療が必要となる場合も少なくありません。 加齢黄斑変性にはこの他にも様々なサブタイプが存在し、中には難治例も多いです。加齢黄斑変性は網膜の断層像を撮影する光干渉断層計検査(OCT)や造影剤を用いずに目の奥の血管撮影ができるOCTアンギオグラフィ検査(OCT-A)によって正確な病態理解と診断が可能となっています。検診などで指摘された場合や歪み・視野異常などの自覚症状がある場合には、一度眼科受診をお勧めします。