- ○過活動膀胱とは
膀胱の大切な働きは、腎臓で作られた尿をためることと、たまった尿を適切なタイミングで出すことです。
過活動膀胱は膀胱に尿が十分にたまっていないうちに膀胱の筋肉が収縮してしまうことで、下のように尿意切迫感(我慢できないような強い尿意を突然もよおす)に加えて頻尿や尿もれを生じる疾患です。国内の調査では40歳以上の日本人のおよそ8人に1人が過活動膀胱による尿の症状を持っていると言われています。
- ○どうして起こるの?
神経の異常に由来する場合(神経因性)とそうでない場合(非神経因性)があります。
1 神経因性
脳疾患(脳梗塞、脳出血、パーキンソン病など)、脊髄疾患(脊髄損傷、多発性硬化症、二分脊椎など)などが原因となります。こういった疾患では膀胱と脳の間の神経伝達がうまくいかなくなり、尿が十分にたまっていないのに尿意をもよおしたり、我慢することができなくなります。
2 非神経因性
男性の場合は前立腺肥大により尿の通り道が狭くなり、なんとか尿を出そうと膀胱が頑張っているうちに膀胱の筋肉が固くなってしまい、尿をうまくためられなくなる場合があります。また女性では出産や加齢により骨盤の筋肉が弱まることにより過活動膀胱となることがあります。その他に男女共通の原因としては生活習慣病やメタボリック症候群などによる膀胱の血流障害、また膀胱の加齢もあげられます。ただ、中には原因のわからない特発性のものも多くあります。
- ○どんな検査をするの?
問診で、どの様な症状でお困りなのかを詳しくお聞きすることが大切です。過活動膀胱の症状の程度を知るための簡単な専用問診票もあります。
また尿検査や腹部超音波検査でその症状が過活動膀胱によるものなのか、他の病気が隠れていないかを調べます。男性の場合は腹部超音波検査で前立腺の大きさをチェックすることもできます。その他に1回の尿の量や勢いを調べる検査を行うこともあります。
泌尿器科の検査というと何をするのか不安に思われることも多いかと思いますが、いずれも比較的体への負担も少なく行える検査です。
○どんな治療法があるの?
1 行動療法
水分の摂取の仕方など生活習慣の改善や、膀胱訓練(少しずつ排尿の間隔をのばしていくことによって膀胱にためられる尿の量を増やす方法)、骨盤底筋体操があります。
2 お薬での治療
最も一般的な治療です。飲み薬や貼り薬が使われます。お薬によって膀胱の筋肉をリラックスさせて尿をためやすくする治療です。
3 その他の治療
電気刺激や磁気刺激療法があります。 また、内服治療を少なくとも3ヶ月続けても尿失禁が改善しない方や、内服薬の副作用(口のかわきや、便秘など)により内服の継続が困難な方では2020年4月よりボツリヌス療法が保険適用となりました。