当クリニックでは、0才から中学生までの子どもを対象として診察を行う小児眼科を設けており、1971年に国家資格として誕生した子どもの弱視、斜視の機能矯正や視機能の検査を専門に行う視能訓練士がお子様の検査を担当いたします。
目次
視能訓練士の業務内容
視能訓練士の業務内容は次の4つです。
視能矯正
弱視や斜視の子どもの視力向上や視機能獲得を
目的とした視能訓練を行う
健診(健診)業務
3才児健康検査における視覚検査や成人の生活習慣病予防検診を行い疾患の早期発見に努める
視能検査
医師の診断や治療に必要なデータを提供するための
検査を行う
ロービジョンケア
疾患やけがなどで低下した視機能を補いQOL(生活の質)を改善する取り組みを行う
産まれたばかりの0才児ははっきりとものは見えず、生後3ヵ月で0.02、1才では0.2程度の視力になると考えられていますが、3才で0.6~0.9、5才で1.0となり視力は成熟してしまいます。
つまり子どもの場合、3才児健診や幼稚園、保育園で眼の疾患を早期発見し眼科での治療を開始すれば、小学校入学までに視力の改善が期待できるのです。
このことから、当クリニックではもしお子様の目に何らかの異変を感じた場合、子どもの視機能についてのプロである視能訓練士による検査を受けることをおすすめしているのです。
当クリニックは3才児健診における精密検査(3次検査)の受け入れを行っておりますが、もしお子様に次のような症状があった場合は3才児健診を待つことなく受診してください。
- 頭を左右どちらかに傾けたり、回したりしあごを上下させる
- 視線が内側や外側に寄っている
- 物を見る時目を細めている
- 極端に近づいて物を見ようとする
- 上目づかいや下目づかいで物を見ようとする
- まぶたの形や大きさに左右で差がある
- 屋外に出ると眩しがる、嫌がるといった反応がある
- 瞳の中央の奥側が白く光っている
また子どもの目に気になる症状がある場合、小児眼科と小児科のどちらに受診するのかを迷われることもあるかもしれませんが、目だけに異常がある場合は小児眼科、発熱・くしゃみ・鼻水・湿疹などの目以外の症状も見られる場合は小児科に受診をしてみてください。
小児眼科の眼の症状について
◎斜視
斜視は対象物を見るときに目の向きが左右で合わないことを言います。左右で異なる情報が入ってきてしまうため1つのものが2つにみえることもあります(そのため一方の目の情報を無意識に遮断することがありこれを抑制といいます。斜視の方が必ずしも2つに見える症状を訴えないのはこのためです)。眼の向きを調整するのは片眼につき6つの筋肉とそれを支配する脳神経ですがこのバランスが崩れてしまうことで斜視がおきます。脳神経外科や神経内科・小児科での精査が必要な場合もあります。
◎遠視
遠視とは眼の中に入ってきた遠くの景色が網膜の後方で焦点を結ぶ状態を言います。軽い遠視であれば水晶体の調節によって網膜上にピントを移動することができますが、強い遠視では網膜の後方に焦点が移動し網膜上にピントを合わせることが難しくなるでしょう。近視の場合と異なり、近づいてもさらに焦点が網膜のより後方に移動するため見やすくなることはありません。弱視の原因となるので眼鏡の装用が必要となります。
◎軸性近視
軸性近視とは一般的な近視のことです。近視とは眼の中に入ってきた遠くの景色が網膜の前方に焦点を結ぶ状態を言います。その原因は主に眼球が前後方向に大きくなることにより焦点が取り残されてしまうことによるものです。いちど大きくなった眼の形は縮むことはありませんので近視は改善しません。見ているものが近づくと焦点が網膜の方に移動するのではっきりとみることができます。
◎仮性近視
仮性近視とは近くを見る時間が長かったことにより、ピントを合わせるための筋肉が過剰に緊張し一時的な近視となった状態です。生活を改善したり(20分近くを見たら20秒間遠くを見るようにするなど)、点眼を使用したりすることで良くなります。
◎乱視
乱視とは縦軸と横軸の焦点が異なる状態です。縦軸を合わせると横軸がぶれ、横軸を合わせると縦軸がぶれます。網膜の近くで縦ブレを起こすタイプの乱視と、横ブレを起こすタイプの乱視があるのが特徴的だと言えるでしょう。縦ブレでは眼を細めることによりぶれが軽減するので生活上の影響は小さい反面、横ブレではぶれが軽減しないため生活への影響が大きくなります。
◎弱視
弱視とは遠視や乱視や斜視、視覚情報の遮断などにより網膜に鮮明な画像情報が投影されなかったため、網膜で情報を受け取り脳に伝達し情報を処理するという経路が未発達となってしまう状態のことを言います。
この情報処理系は6才から8才までに完成することから、それまでに網膜上に鮮明な画像が見えるようにする必要があり、その時期を過ぎると眼鏡などで矯正しても視力が出なくなってしまいます。
◎細菌性結膜炎
細菌性結膜炎とは細菌に感染することで起こる結膜炎のことです。お子様は涙の排水経路である鼻涙管が未発達なため、かぜや鼻詰まりをきっかけに鼻腔からの菌が結膜で増えてしまうことがあります。これが細菌性結膜炎の主な原因となります。充血や目やにを伴う場合治療を必要としますので速やかに小児眼科の診察を受けてください。
◎ウイルス性結膜炎
ウイルス性結膜炎とはウイルスに感染することで起こる結膜炎のことです。炎症が強く、充血・めやに・目の痛みを訴えます。速やかに小児眼科を受診しましょう。感染力が強いので手洗いや消毒などの対応が必要となるでしょう。目やにが炎症性の偽膜を作った場合、適切なタイミングで除去しないとまぶたと白目が癒着してしまうなどの後遺症を残すこともあります。
◎先天性鼻涙管狭窄症
涙の排水経路である鼻涙管は上下のまぶたの目頭にある涙点からはじまり鼻腔につながりますが、鼻腔への開口部が生まれつき閉塞している状態です。生まれてすぐからの片目の目やにや、涙が多いというのが主な症状になります。閉鎖部は膜状に閉塞していることが多いので物理的に開けることで開放されます。これをブジーと言いますが、1歳までに自然に治ることも多い疾患なので様子を見ることもあります。
◎ものもらい(麦粒腫)
ものもらいとはまぶたにある分泌腺に細菌が入り炎症を起こす病気です。ものもらいは、正確にはまぶたの分泌腺に細菌感染を起こす麦粒腫を指しますが、霰粒腫(めばちこ)などの感染を伴わないものも含む広い疾患群をまとめて指すこともあります。炎症が関与するので目をこすらないようにしなければならないのですがお子様では我慢できずにこすって腫れてしまうことがよくあります。そのような場合、一時的には冷やすようにするとよいでしょう。腫れがひどくなった場合、まぶたの組織は周辺に炎症が広がりやすいので点滴が必要になることもあります。